本記事の執筆・市場調査機関

企業概要:

株式会社ノークリサーチ
25年に渡って、日本の中堅・中小企業のIT活用に関する市場調査とコンサルティングを提供している第三者調査機関。

筆者略歴:

シニアアナリスト 岩上 由高(いわかみ ゆたか) 博士(工学)
ITアナリスト歴15年目。ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ITベンチャー企業数社でシステム開発/運用、プロダクトマネージャ、CTOなどの経験を積む。
そこで培った知見と人脈を生かしながら、幅広いIT活用分野における市場調査とコンサルティングに従事。

サーバ環境の見直しを図るユーザ企業

2023年10月にWindows Server 2012のサポートが終了しましたが、ユーザ企業において
クラウドへ移行したが社内/クラウド間の通信品質や通信費用などの問題でサーバ環境の見直しや
オンプレミスへの回帰をご検討中のお客様もいらっしゃると予想されます。
そこで有効な商材がHCI(ハイパーコンバージドインフラ)です。
2022年度の市場調査データから、「なぜHCIが重要なのか?」の背景と提案時のポイントを解説しています。

過剰なクラウドファーストからの回帰が起き始めている

Windows Server 2012サポート終了に際しては、「これを機会にクラウドへ移行するユーザ企業も多いのでは?」という懸念もあるかも知れません。確かに、昨今のDXに向けたIT活用では「クラウドファースト」が提唱されており、クラウドに対するユーザ企業の関心も高まってきています。

ところが、オンプレミスからクラウドへの移行が一方的に加速しているか?というと、そうとは言えない動きも見られます。以下のグラフは年商500億円未満のユーザ企業に対して、今後の導入/更新を予定しているサーバ形態を尋ねた結果を「オンプレミスのみ」を導入している、もしくは「クラウドのみ」を導入している場合の2通りに分けて集計した結果です。

導入/更新を予定しているサーバの形態(複数回答可)

「オンプレミスのみ」の場合は95.7%が今後もオンプレミスを選ぶと回答しつつ、53.2%が同時にクラウドも導入する意向を示しています。サーバ環境の選択肢として、クラウドが定着しつつある状況を示した結果と言えます。一方、「クラウドのみ」の場合も94.4%が今後もクラウドを選ぶと回答していますが、オンプレミスも55.6%存在しています。つまり、クラウドを選んだユーザ企業は全てをクラウドに集約してしまうわけではなく、オンプレミスへと回帰する動きもあるわけです。つまり、Windows Server 2012サポート終了においてオンプレミスからクラウドへの移行が多発する可能性は低く、むしろクラウドからオンプレミスに戻ってくるケースも少なからず見られると予想されます

基幹系システムでは「オンプレミス主体+SaaS併用」が多い

こうした「クラウド一辺倒ではない動き」は業務システムの領域でも確認できます。以下のグラフは「SaaS形態」のERPを導入済み/導入予定であるユーザ企業に対して、ERPの本体となる部分の運用形態を尋ねた結果です。

最も主要なERP製品/サービスの運用形態(複数回答可)

ERPをSaaSで利用している場合には同時にパッケージでも利用しており、その形態は社内設置、データセンタ設置、IaaS/ホスティング利用と多岐に渡っていることがわかります。特に中堅・中小市場では個々の基幹系システムからERPへのステップアップが進んでおり、その過程で運用形態にも変化が起きやすくなります。ですが、その変化はオンプレミスからクラウドへの一方向ではなく、SaaSを利用している場合においても本体部分はサーバを社内やデータセンタに設置し、その上でERPパッケージを稼働させているといったケースが多々あるわけです。

今後のサーバ導入では拡張性の高いオンプレミス環境が重視される

このようにオンプレミスとクラウドが混在する中、ユーザ企業はサーバ環境に何を求めているのでしょうか?それを知るヒントとなるのが以下のグラフです。これはユーザ企業に対し、オンプレミスとクラウドの双方を含むサーバの導入/更新や管理/運用における今後の方針を尋ねた結果です。(n=700)

サーバ導入/更新や管理/運用の方針(複数回答可)

既に見てきたように「オンプレミスとクラウドは今後も双方を併用する」が他の項目と比べて高い値を示していることが確認できます。注目すべきなのは「拡張性/可用性が低くても安価なクラウドを選ぶ」より「サーバのデータ容量を拡張できる仕組みが必要」の方が高い値を示している点です。ここでの『サーバ』にはクラウドだけでなく、オンプレミスも含まれます。つまり、オンプレミスの場合にもデータ容量を拡張できる仕組みが求められているのです。

オンプレミス回帰やWindows Server 2012のサポート終了はHCI導入の好機

オンプレミスのサーバ環境でもデータ容量の拡張を可能にする仕組みとして、従来ではSAN(Storage Area Network)が広く用いられてきました。ですが、中堅・中小企業を含む幅広い市場を考えた場合、SANでは費用や管理/運用の面で敷居が高くなってしまいます。こうした場合に有効な商材がHCI(ハイパーコンバージドインフラ)です。

下図が示すようにHCIはサーバ内蔵のハードディスクやフラッシュメモリを複数のサーバ間で共有することによって、サーバのみのシンプルな構成で拡張可能なストレージ環境を実現できます。

SANによる構成
HCIによる構成

出典:ノークリサーチ(2023年)

共有ストレージ機器やストレージ専用ネットワーク(FC-SANやIP-SAN)が不要である分、HCIは裾野の広い中堅・中小企業にとっても導入しやすいサーバ形態と言えます。Windows Server 2012のサポート終了を控え、オンプレミスへの回帰も見られる中、オンプレミスでも高い拡張性を実現できるHCIはDX時代のサーバ環境に不可欠な要素なのです。

一部のユーザ企業では「HCIはサーバ仮想化の手段(仮想化のニーズがなければ関係ない)」と捉えているケースもあるため、HCIを提案する際には「オンプレミスでもシンプルな構成かつ手軽に拡張可能なサーバ環境を実現できる」ことを最初に伝えることが重要です。

また、導入/運用のポイントについては

  • 十分なI/O性能を持つストレージ環境を実現できるか?
  • バックアップ/リストアはどのように行うのか?
  • HCI基盤ソフトウェアは何を選ぶべきか?
  • サーバ機器は何を選ぶべきか?

といった点をユーザ企業から質問される可能性が高いので、ベンダやディストリビュータから提供される検証データや導入/運用のガイドなどを活用しながら、ユーザ企業に説明できるようにしておきましょう。

このように今後のサーバ導入提案においては、HCIの利点や導入/運用のポイントを分かりやすく説明できるように準備しておくことが大切です。