あらゆる業種の現場業務を効率化 デジタルテクノロジーで生産性向上を支援

業務の効率化や生産性の向上はあらゆる業種における共通の課題だ。これらを実現するためには、業務をデジタル化していく必要がある。デジタル化を進めずにアナログな作業を続けていると、現場業務における「Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)」(QCD)が低下してしまう恐れがある。しかし現場にデジタルテクノロジーの知識を持つ従業員がいない場合、どこからデジタル化を進めればよいか分からないケースもあるだろう。そこで今号は、現場業務のQCD向上に役立つさまざまなソリューションを紹介する。

中小企業でもDXの取り組みが進む中 IT人材不足・知識不足がDX推進の課題に

業務の効率化を目指してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進したい企業は多いだろう。しかし中には何から取り組めばよいか分からず、いまだ手つかずになっている企業も存在する。それでは具体的に、どれほどの企業がすでにDXに取り組めているのだろうか。本記事では中小企業のDX推進状況について、日本の中小企業の起業や経営課題に関する支援を行う中小企業基盤整備機構に話を聞いた。

中小企業基盤整備機構 広報・情報戦略統括室 総合情報戦略課

中小企業のDXに対する理解が進む

中小企業基盤整備機構が2024年12月に公開した「中小企業のDX推進に関する調査(2024年)」は、個人事業主を除く全国の中小企業経営者、経営幹部を対象に調査が行われている。回答企業の属性は製造業が50%、建設業が10%、卸売業が10%、小売業が15%、サービス業(情報通信)が5%、サービス業(宿泊・飲食業)が5%、サービス業(その他)が5%だ。従業員規模は301人以上が5.6%、201~300人が6.4%、101~200人が8.6%、51~100人が12.7%、21~50人が14.4%、6~20人が20.2%、5人以下が32.1%となっている。資本金規模は3億円超が3.3%、1億円超~3億円以下が10.3%、5,000万円超~1億円以下が18.4%、3,000万円超~5,000万円以下が14%、1,000万円超~3,000万円以下が22.2%、1,000万円以下が31.8%だ。

本調査では、DXを進めるための三つの段階を中小企業がどの程度理解しているか尋ねている。三つの段階とは、紙の作業をデジタル化する「デジタイゼーション」、業務フローやプロセス全体をデジタル化する「デジタライゼーション」、デジタル技術を活用して新たな付加価値を生み出し、ビジネスモデルを変革していく「デジタルトランスフォーメーション」だ。調査の結果「理解している」と回答した企業は12.2%、「ある程度理解している」と回答した企業は37%で、理解している傾向を示す回答が49.2%を占めた。
DXの必要性を尋ねた設問では「必要だと思う」と回答した企業は28.7%、「ある程度必要だと思う」と回答した企業は44.5%で、DXを必要としている企業は73.2%に上った。中小企業基盤整備機構 広報・情報戦略統括室 総合情報戦略課 主任 清山真理菜氏は、この結果について以下のように分析する。「DXの理解度と必要性の結果を2023年の調査と比較すると、DXについて理解している企業も必要としている企業もほぼ横ばいの数値になっています。この結果から、中小企業のDXに対する理解や必要性に対する認識は、それなりに進んできていると感じています」

DXの取り組みは高度化へ

本調査では、中小企業がDXに期待する成果・効果についても尋ねている。この設問の上位回答を見ると「コスト削減、生産性の向上」が38.8%、「業務の自動化、効率化」が38.6%で、次いで「データの一元化、データに基づく意思決定」が26.2%、「働き方改革、多様な働き方の実現」が23.1%となっている。
中小企業基盤整備機構 広報・情報戦略統括室 総合情報戦略課 課長代理 吉見恭明氏は、この結果から見える中小企業のDXへの期待をこう話す。「上位回答であるコスト削減、生産性の向上や業務の自動化、効率化は、DXを進めるための三つの段階で示すと、デジタイゼーションやデジタライゼーションによる効果が高いものだと考えています。デジタルトランスフォーメーションまで進むと、次いで回答が多いデータの一元化、データに基づく意思決定や働き方改革、多様な働き方の実現といった、既存の企業の価値を高める方向性に移っていきます。そのため今回の結果から、中小企業はまだデジタイゼーション、デジタライゼーションによって生み出される価値を期待していることが分かります」

では実際、中小企業のDXの取り組み状況はどうなっているのだろうか。調査の結果「既に取組んでいる」と回答した企業は18.5%、「取組みを検討している」と回答した企業は23.5%で、42%の企業がすでにDXに前向きな姿勢を取っている形となった。
中小企業基盤整備機構 広報・情報戦略統括室 総合情報戦略課 係員 津田梨央氏は「2023年の調査では、既に取組んでいる・取組みを検討していると回答した企業は合わせて31.2%でした。今回は前回の結果を10.8ポイント上回り、中小企業にも徐々にDXが浸透してきていることが分かる結果となりました」と中小企業のDX推進状況を語る。
DXに向けた取り組みの進捗状況を尋ねた設問では、最も多い回答は「アナログで行っていた作業やデータのデジタル化を進めている」で35.7%だった。2番目に多い回答は「個別の業務や製造等のプロセスのデジタル化を進めている」で28.6%、3番目は「デジタル技術を活用して全体的な業務やビジネスモデル、企業文化や風土の変革を進めている」で28.1%だった。

この結果を見て中小企業基盤整備機構 広報・情報戦略統括室 総合情報戦略課 係員 山口杏珠氏は、中小企業のDXの取り組みの変化を次のように話す。「最も多かった回答はデジタイゼーションに当たりますが、この回答は2023年の調査と比較すると3.3ポイント下がっていました。対して2番目に多い回答はデジタライゼーションに当たり、こちらは2023年の調査と比較すると3.9ポイント上がっていました。また、3番目に多かったデジタルトランスフォーメーションに当たる回答も、2023年の調査から2.1ポイント上がる結果となっていました。これにより、中小企業のDXの高度化が進んでいることが見えてきます」

DXに期待する成果・効果(n=1,000 複数回答)
出所:中小企業のDX推進に関する調査(2024年)(中小企業基盤整備機構)

DXに期待する成果・効果(n=1,000 複数回答)

全ての企業にDXのアプローチを

中小企業にもDXが浸透しつつある中で、DXに取り組むに当たっての課題とは何だろうか。課題を尋ねた設問では、最も多い回答が「ITに関わる人材が足りない」で25.4%だった。次いで多い回答は「DX推進に関わる人材が少ない」で24.8%となり、どちらも人材に関わる回答が上位となった。「DXが高度化するにつれて実現難易度が上がっていくため、ITやDX推進に関わる人材の不足が課題として多く挙がってきているのだとみています」(吉見氏)
一方、従業員規模が20人以下になると、全体の回答とは異なる結果が出てきた。「従業員規模が20人以下の企業では、最も多い回答は『予算の確保が難しい』で26.4%でした。2番目に多い回答は『具体的な効果や成果が見えない』で22.2%、3番目に多い回答は『何から始めてよいかわからない』で18.7%でした。この結果から、従業員規模が少ない企業はまだDXが進んでいないこともあり、実際どうしたら良いか分からない状態であることが見えてきます。DX推進が行えておらず、DXによる成果が分かっていない現状が表れています」(清山氏)

最後に吉見氏は、中小企業のDX推進に向けたメッセージをこう語った。「徐々に中小企業でもDX推進に向けた取り組みが進んでいます。しかし一方で、DXを進めるための最初の知識が不足していたり、DXの必要性を理解していなかったりする企業も一定数います。そういった企業にも、DX推進に関するアプローチをしていくことが必要です。日本全国の中小企業がDXを進めることで、日本企業がどんどん活性化していってほしいですね」