Azure 第1回『クラウド環境へのMicrosoft ライセンス持ち込みについて』

こんにちは、Azure担当の太田です。今回は、複雑で分かりづらいクラウド環境、データセンター環境へのMicrosoft ライセンス持ち込みについて整理してみたいと思います。
ライセンス持ち込み許可パターンやライセンスモビリティ・Azureハイブリッド特典等が適用できる条件はクラウド業者や契約形態で異なります。

持ち込み先と契約形態について

事業者(Listed Provider/認定アウトソーサー/認定モビリティパートナー)、保有形態(専有/共有)、契約形態(ライセンスのみの持ち込み、ライセンスモビリティ、SPLA)によってそれぞれパターンがあります。
以前はサーバー事業者の提供形態、ホスティング・ハウジングなどの違いによってライセンス持ち込みの解釈が変わってきていましたが、2019年10月より明確に定義がされました。また、2022年10月から「柔軟な仮想化(Flexible Virtualization)」が導入され、持ち込めるライセンスが広がりました。

  • 2019年10月を境に解釈が変更されたListed Provider の専有環境

    Listed Provider とは、Microsoftが2019年に設定したパブリックラウドプロバイダーMicrosoft Azure、Amazon Web Service(AWS)、Google Cloud Platform、Alibaba Cloudの4つの指定プロバイダーのことです。主にAWSですが、かつてEC2 dedicated Hostsは専有環境とみなされ、SA無しでもボリュームライセンスの持ち込みが可能でしたが、Listed Provider への指定を受け、SAによるライセンスモビリティの適用が必要ということになりました。

  • https://www.microsoft.com/ja-jp/licensing/news/updated-licensing-rights-for-dedicated-cloud?SilentAuth=1&wa=wsignin1.0
  • SA(ソフトウェアアシュアランス)によるライセンスモビリティとは

    ボリュームライセンスを購入する際に同時購入する必要があるSAの特典として、その有効期限期間分だけ、特定のライセンスを、認定されたデータセンターに導入することができる権利となります。
    費用算出時には、SAの期間(Open Valueでは3年)に注意し、更新分の費用算出も忘れずにしましょう。ちなみに、Software in CSPにはSAを付けられないため、ライセンスモビリティを利用することはできません。

  • 柔軟な仮想化(Flexible Virtualization)とは

    2022年10月から製品条項の「共通のライセンス条項」に追加された条項です。
    ソフトウェアサブスクリプションまたはSA付きライセンスであれば、認定アウトソーサーの環境に持ち込むことはできます。
    「共有のライセンス条項」のため、製品条項の各製品ページで特別な制約が規定されていない限り、どのライセンスでも持ち込みが可能となっております。

  • https://www.microsoft.com/licensing/terms/ja-JP/product/ForallSoftware/all

柔軟な仮想化の利点

サブスクリプション ライセンスまたはアクティブなソフトウェア アシュアランス付きライセンス (CAL を含みます) をお持ちのお客様は、共有サーバーを含む、認定アウトソーサーが日常的に管理および制御するデバイスに本ソフトウェアのライセンスを取得した複製を使用することができます。

データセンター事業者の種類

  • Listed Provider
  • 認定アウトソーサー(Listed Provider以外の一般的なデータセンター)
  • 認定モビリティバートナー(認定アウトソーサーの中で、マイクロソフトと認定モビリティ契約をしているデータセンター)
データセンター

保有形態

専用環境
共有環境

専有環境へのライセンス持ち込み方法

サーバーの所有権が誰にあるのか、という解釈が分かれ目になります。専有環境は、基本的にはユーザーに所有権があり、データセンター側は場所を貸している状況と言えます。つまり、ユーザーのサーバーにライセンスを入れるだけという解釈ですので、通常通りの使用と同じ形になります。また、持ち込めるアプリケーションの種類に制限はありませんし、必ずしもSA権は必要ということでもありません。
ただし、Listed Providerの専有環境へ持ち込む場合はSAが必須になります。

Listed Provider SAによるライセンスモビリティ
(Azureはソフトウェアサブスクリプションでも持ち込み可)
認定アウトソーサー/認定モビリティバートナー ライセンスのみ(Software in CSP)

共有環境へのライセンス持ち込み方法

Listed Provider SAによるライセンスモビリティ
(Azureはソフトウェアサブスクリプションでも持ち込み可)
認定アウトソーサー/認定モビリティバートナー 柔軟な仮想化
(ソフトウェアサブスクリプションまたはSAにより持ち込み可)
  • 認定モビリティパートナーは認定アウトソーサーでもあるため、柔軟な仮想化での持ち込みが可能です。
  • ライセンスモビリティの申請方法

    対象ライセンスをSA付で購入し、ライセンスキーを取得したらライセンス確認フォームに必要事項を記入し、フォームに記載のメールアドレス宛に送付していただく形になります。

  • https://www.microsoft.com/licensing/docs/view/Forms?lang=18

"Microsoft License Mobility through SA License Verification Form" をクリックしダウンロードしてください。

Azureについては、申請書のモビリティパートナー情報記入は不要です。申請書を提出し、仮想マシンを作成する際、Azure ハイブリッド特典を利用する設定にしておくだけで権利を行使することが出来ます。

貴社の情報

※認定モビリティパートナーを選択した場合、そちらの情報も記入する必要あり

ライセンス

※Azureの場合は、仮想マシン作成時に設定欄があるので、そちらにチェックするのみ

Listed Providerへ持ち込みできないライセンス

Windows Server、Windows クライアントOS、Officeなどのデスクトップ系ライセンスが挙げられます。
Windows Server については、Listed Providerから提供されるライセンスをご利用ください。

<例外>

プロバイダー名 持ち込み可能ライセンス
Azure ・ソフトウェアサブスクリプションまたはSA付きのWindows Server(Azureハイブリット特典)
・ソフトウェアサブスクリプションのSQL Server(Azureハイブリット特典)
・M365 Apps for enterprise
・M365 Business Premiumに含まれるM365 Apps for business
・Visio Plan 2・Project Plan 3/5
AWS
(Amazon Workspaces のみ、EC2は適用外)
・Microsoft 365 E3/E5
Microsoft 365 A3/A5
Microsoft 365 Business Premium
のいずれかを保有している場合、
Microsoft 365 Apps for enterprise / Microsoft 365 Apps for business の持ち込みが可能。

・Microsoft 365 E3/E5
Microsoft 365 A3/A5
Microsoft 365 Business Premium
のいずれかに加えて、
Project Plan 3/5 または Visio Plan 2を保有している場合、
Project Plan 3/5 または Visio Plan 2を持ち込み可能
  • Azureハイブリット特典とは

    Azureだけに適用できる有利なライセンス体系です。

    Azureでは有効なSA付きで所有しているWindows Server ライセンスを、Azure ハイブリッド特典としてAzure上で利用することが可能となります(オンプレミスとの平行利用期間180日有り)。この場合「ライセンスモビリティ」ではなく、あくまで「Azureハイブリッド特典」という形になりますので、CALの持ち込みは不要となります(コンピューティング費用に含まれます)。もちろん、SAの有効期限切れには注意してください。

    Azureハイブリッド特典では、「ソフトウェアサブスクリプション」というCSPプログラムで販売している、Azureへの移行を前提としたライセンスプログラムも利用できます。ソフトウェアサブスクリプションは、契約単位が1年と3年で、Azure予約インスタンスの契約期間と一致しておりますので、ソフトウェアサブスクリプションでライセンス料金を約40%節約、予約インスタンスで仮想マシンの従量課金を節約すると最大約80%もの料金節約になります。
    ソフトウェアサブスクリプションはオンプレミスへのインストール後、特にSAを付けなくてもAzureへの持ち込みは可能です。Azureハイブリッド特典により最大180日間、オンプレミスとAzure間での二重利用することが出来ます。
    当社のサブスクリプション管理ポータルiKAZUCHI(雷)にて、ソフトウェアサブスクリプションの価格を確認することが可能です。

SPLAを利用するパターン

サービスプロバイダーライセンス アグリーメント(SPLA)は、Microsoftライセンスを利用した自社サービスを第三者であるユーザーに提供することを可能にするプログラムです。データセンターにて展開しているサーバーにSQL ServerやRDSユーザーSAL等のライセンスを付与してユーザーにサービス展開するシーンでは、SPLAを利用する形になります。
一般的なデータセンターやAWSなどでMicrosoftのライセンスを月単位の契約で利用することができますが、実態としては各事業者がSPLAの仕組みで購入しています。SPLAはデータセンター事業を行う会社だけでなく、データセンター事業者から仮想マシンを契約し、その仮想マシンを使ったサービスをユーザーに提供する事業者でも利用することが出来ます。ただし、サービスプロバイダー製品使用権説明書 でDCP対象になっている製品のみ利用可能です。
※DCP対象:ソフトウェア サービスをエンド ユーザーに提供する際にデータ センター プロバイダーを使用すること

SQL Serverについては、SALエディションしか利用できませんのでご注意ください。例えば、「SQL Serverを利用したWebサイトに不特定多数の人がアクセスをする」といった場合、自社のデータセンターですとSQL Server のCoreライセンスを購入すればOKですが、データセンタープロバイダーを利用するとSALエディションしか利用できません。「利用しているユーザー数分」を毎月Microsoftに申告する必要があります。また、Windows Server OS はSALエディションがありませんので使用することが出来ません。こちらは運用上非現実的ではありますので、各データセンターから提供されるライセンスで賄う必要があります。

詳細については下記サイトにてご確認ください。

SPLAにつきましては2025/9/30以降、Listed Provider 上に存在するワークロードでは使用できなくなります。

それ以降は各プロバイダーで供給するライセンスを使用するか、PaaS等ライセンス不要サービスへの移行が必要です。
詳細につきましては下記URLをご確認ください。

まとめ

ここまでで、ボリュームライセンス持ち込み、ライセンスモビリティ、SPLA、の各パターンについて紹介させていただきました。
それぞれをまとめた表が下記になります。

クラウドへのライセンス持ち込みパターンをご理解いただく一助になれば幸いです。

  専有 共有
クラウド事業者/契約形態 ライセンス
持ち込み
ライセンス
モビリティ
SPLA ライセンス
持ち込み
ライセンス
モビリティ
SPLA
※5
Listed Provider※1   ※2 ※3   ※3
認定アウトソーサー   ※4  
認定モビリティパートナー  

※1 Listed ProviderではListed Provider用MSライセンス(Windows10)の利用が可能です(各プラットフォーム上での課金となります)。
※2 Azure を除くListed Provider は、持ち込みできるライセンスに制限がございます。Windows Server OS のライセンス持ち込みはできません。
※3 Listed ProviderにSPLAライセンスを持ち込めるのは、2025/9/30までです。
※4 仮想環境はエンド専用である必要があります。物理サーバーは他のエンドと共用でも問題ありません。
※5 SALのみご利用いただけます。

<Windows Serverの持ち込み>

  専有 共有
Listed Provider
(Azure以外)
持ち込み不可
※2019年10月以前に購入したライセンスであればSA無しで持ち込み可
持ち込み不可
Azure Azure ハイブリッド特典
(ソフトウェアサブスクリプション/SA)
Azure ハイブリッド特典
(ソフトウェアサブスクリプション/SA)
認定アウトソーサー ライセンス持ち込み(Software in CSP) 柔軟な仮想化
(ソフトウェアサブスクリプションまたはSA)
認定モビリティ
パートナー
ライセンス持ち込み(Software in CSP) 柔軟な仮想化
(ソフトウェアサブスクリプションまたはSA)

<SQL Serverの持ち込み>

  専有 共有
Listed Provider
(Azure以外)
・ライセンスモビリティ(SA)
※2019年10月以前に購入したライセンスであればSA無しで持ち込み可
・SPLA(SALのみ)
・ライセンスモビリティ(SA)
・SPLA(SALのみ)
Azure ・Azure ハイブリッド特典
(ソフトウェアサブスクリプション/SA)
・SPLA(SALのみ)
・Azure ハイブリッド特典
(ソフトウェアサブスクリプション/SA)
・SPLA(SALのみ)
認定アウトソーサー ・SQL Serer Standardサーバーライセンス+CAL、SQL Server Enterprise コアライセンス:
ライセンス持ち込み(Software in CSP)
・SQL Server Standardコアライセンス
ライセンス持ち込み(ソフトウェアサブスクリプションまたはSA)
※2022/11/17以降に購入したSQL Server Standardコアライセンスを仮想環境で利用する場合はソフトウェアサブスクリプションまたはSAが必須です。
・SPLA(SALのみ)
・柔軟な仮想化
(ソフトウェアサブスクリプションまたはSA)
・SPLA(SALのみ)
認定モビリティ
パートナー
・SQL Serer Standardサーバーライセンス+CAL、SQL Server Enterprise コアライセンス:
ライセンス持ち込み(Software in CSP)
・SQL Server Standardコアライセンス
ライセンス持ち込み(ソフトウェアサブスクリプションまたはSA)
※2022/11/17以降に購入したSQL Server Standardコアライセンスを仮想環境で利用する場合はソフトウェアサブスクリプションまたはSAが必須です。
・SPLA(SALのみ)
・柔軟な仮想化
(ソフトウェアサブスクリプションまたはSA)
・SPLA(SALのみ)

<RDS CALを持ち込む際の注意点>

RDS CALについては、製品条項の固有に規定により、「柔軟な仮想化」対象外になる場合があります。

「柔軟な仮想化」の対象 「柔軟な仮想化」の対象外
Windows Server・RDS CALどちらも持ち込む場合。→認定アウトソーサーの環境にソフトウェアサブスクリプションまたはSA付きのRDSユーザーCALまたはRDSデバイスCALを持ち込み可能。 RDS CALのみを持ち込む場合。→認定モビリティパートナーの環境にSA付きRDSユーザーCALのみ持ち込み可能。※専有環境の場合でもSAが必須になります。

Remote Desktop Services (RDS) User CAL および User SL の拡張された権利

お客様は、Microsoft Azure サービス、またはライセンス モビリティ確認フォームに記入して提出したソフトウェア アシュアランスによるライセンス モビリティ パートナー の共有サーバーまたは専用サーバーのいずれかで、内部使用のみを目的としたOSE で実行されている Windows Server ソフトウェアと共に RDS User CALおよびUser SLを使用することができます。

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