CSP 担当者コラム
CSP
Power Platform のライセンス - どのライセンスで何ができるのか
Power Platform は Power Automate、Power Apps、Power BI、Power Pages、そして Copilot Studio の5つのサービスで構成されています。
この記事では、Power Platform を最大限に活用するために必要なライセンスについて解説します。各サービスのライセンス内容を理解することで、最も適したプランを選択し、コスト効率良く運用するためのヒントを提供します。
Power Platform について、詳しくは以下を参照してください。
Power Platform のライセンスの概要
Power Platform のライセンスは大きく次の3つに分類できます。
-
無料ライセンス
無料で利用できるライセンスです。 -
シードされたライセンス
Microsoft 365 や Dynamics 365 などに含まれている Power Platform の利用権です。 -
有償ライセンス
ユーザー単位やテナント単位で購入するライセンスです。
この他に試用ライセンス、開発者ライセンスが提供されているサービスもあります。
この記事で解説しているライセンスについてより詳細な情報が必要な場合は、以下の資料を参照してください。
Power Automate
Power Automate は、Microsoft が提供する業務プロセスの自動化ツールです。また Windows コンピューターでの動作を自動化する RPA ツールである Power Automate Desktop も提供されています。
Power Automate のライセンス
Power Automate の主なライセンスは以下の通りです。
・Microsoft 365 にシードされたライセンス
・Power Automate Premium ★
・Power Automate プロセスライセンス ★
・Power Platform 従量課金プラン(Power Automate の従量課金はプレビュー)
★ の付いているものが有償のライセンスです。
この他に無料試用版と開発者プランも用意されています。
プロセスライセンスはフローやフローを実行するコンピューターに割り当てる「容量ライセンス」、従量課金プランはフローの実行回数に対する課金、それ以外はフローを作成・実行するユーザーに割り当てる「ユーザーライセンス」です。
「ユーザーライセンス」では、Power Automate でのフローの作成・実行を行うユーザーごとにライセンスが必要です。Microsoft 365 にシードされたライセンスと Premium ライセンスの主な違いは以下の通りです。
ライセンスの種類 | Microsoft 365 | Premium |
---|---|---|
1日のPPR 制限※1 | 6,000 | 40,000 |
事前構築コネクタ | 標準のみ | 標準とプレミアム |
カスタム コネクタ | × | 使用可 |
AI Builder※2 クレジット | × | 5,000/月 |
Dataverse ※3 | ×※4 | 〇 |
Power Automate for desktop | ×※5 | 〇 |
-
1:Power Platform のフローやアプリを実行すると、Power Platform のクラウドサービスに対する呼び出し(APIリクエスト)が行われます。この呼び出しが PPR(Power Platform Request)です。
-
2:AI Builder は Power Platform ですぐに利用できる事前構築済みの AI モデルです。呼び出し回数によってクレジットが消費され、超過分は追加購入できます。
-
3:Dataverse はPower Platform から利用可能な事前構築済みのデータベースです。複雑なデータベース設計なしにビジネスデータを蓄積し、利用することができます。また Copilot からも参照・利用できます。
-
4:Teams 内で動作する Power Apps アプリから呼び出されるフローに限り Dataverse for Teams を利用できます。Dataverse for Teams は Dataverse の機能縮小版です。
-
5:Windows にシードされた Power Automate Desktop ライセンスを利用可能です。このライセンスにはいくつかの制限があります。
Power Automate の各ライセンスについて、詳しくは以下を参照してください。
こんなことにはこのライセンス
SharePoint Online と Outlook や Teams が連携したフローを作成したい
Microsoft 365 のテナント内のデータのみを扱うフローは、Microsoft 365 ライセンスにシードされたライセンスで作成できます。
Power Automate でどんなことができるか検証したい
Microsoft 365 サブスクリプションにシードされたライセンスで、すぐに検証を始めることができます。また Premium ライセンスの機能を検証する場合は、試用ライセンスが利用できます。
Power Automate の開発について学習したい
開発者ライセンスが利用できます。Microsoft 365 のアカウントがあれば、サインアップするだけですぐに Power Automate と Power Apps のすべての機能が利用できます。
クラウドフローとデスクトップフローを連携させたい
Power Automate Premium が必要です。Windows にシードされた Power Automate Desktop ライセンスで実行できるのは、単独のデスクトップフローのみです。
Power Automate から Microsoft 365 以外のクラウドのデータにアクセスしたい
Microsoft 365以外のさまざまなクラウドサービスへの接続には、プレミアムコネクタが利用できる Power Automate Premium が必要です。
Power Automate からオンプレミスのデータにアクセスしたい
オンプレミスのデータへのアクセスには、プレミアムコネクタが利用できる Power Automate Premium が必要です。
担当者が開発したフローを全社員で利用したい
開発者が作成した少数のフローを多数のユーザーが利用する場合は、プロセスライセンスを利用した方が低コストになる場合があります。
Power Apps
Power Apps は、ユーザーが自分の業務ニーズに合わせたカスタムアプリケーションをローコード・ノーコードで簡単に作成できるプラットフォームです。
Power Apps のライセンス
Power Apps の主なライセンスは以下の通りです。
・Microsoft 365 にシードされたライセンス
・Power Apps Premium ★
・アプリごとの Power Apps プラン ★
・Power Platform 従量課金制プラン ★
★ の付いているものが有償のライセンスです。
この他に無料試用版と開発者プランも用意されています。
従量課金プランはフローの実行回数に対する課金、それ以外のライセンスはアプリを作成・実行するユーザーに割り当てる「ユーザーライセンス」です。
Microsoft 365 にシードされたライセンスと Premium ライセンスの主な違いは以下の通りです。
ライセンスの種類 | Microsoft 365 | Premium |
---|---|---|
カスタム アプリの実行 | 無制限 | 無制限 |
アプリ内でのフローの実行 | 〇 | 〇 |
事前構築コネクタ | 標準のみ | 標準とプレミアム |
カスタム コネクタ | × | 使用可 |
AI Builder クレジット | × | 500/月 |
Dataverse | ×※1 | 〇 |
-
1:Teams 内で動作する Power Apps アプリに限り Dataverse for Teams を利用できます。
アプリごとの Power Apps プランは、1人のユーザーが1つのアプリを実行するためのライセンスです。同じユーザーが別のアプリを実行する場合や同じアプリを別のユーザーが実行する場合は、個々にライセンスが必要となります。
Power Apps の各ライセンスについて、詳しくは以下を参照してください。
こんなことにはこのライセンス
SharePoint Online に保存されているデータを利用するアプリを作成したい
Microsoft 365 のテナント内のデータのみを扱うフローは、Microsoft 365 ライセンスにシードされたライセンスで作成できます。追加の費用は発生しません。
Power Apps でどんなことができるか検証したい
Microsoft 365 サブスクリプションにシードされたライセンスですぐに検証を始めることができます。また Premium ライセンスの機能を検証する場合は、試用ライセンスが利用できます。
Power Apps の開発について学習したい
Power Automate と同様に、開発者ライセンスが利用できます。
Power Apps から Microsoft 365 以外のクラウドのデータやオンプレミスのデータにアクセスしたい
Power Automate と同様に、いずれも Premium ライセンスが必要です。
担当者が開発したアプリを全社員で利用したい
開発者が作成した少数のアプリを多数のユーザーが利用する場合は、アプリごとの Power Apps プランがコスト的に最適となる場合があります。
Power BI
Power BI は、ビジネス インテリジェンス ツールであり、ユーザーがデータを視覚化し、インサイトを得るためのプラットフォームです。
Power BI のライセンス
Power BI の主なライセンスは以下の通りです。
・Microsoft Fabric 無料版(Power BI 無料版機能を含む)
・Power BI Pro ★
・Power BI Premium Per User ★
・Power BI Premium 容量 ★
(2024年7月以降新規購入不可。更新は2024年12月末まで可能となっており、2025年1月以降 Microsoft Fabric 容量に完全に切り替わります)
★ の付いているものが有償のライセンスです。
Power BI Pro は Microsoft 365 E5 に含まれています。
Power BI Premium 容量(Microsoft Fabric 容量)は、BI のレポートやワークスペースを実行するためのリソースをテナント全体で取得する「容量ライセンス」、それ以外のライセンスはアプリを作成・実行するユーザーに割り当てる「ユーザーライセンス」です。
無料版ライセンスと Pro ライセンス、Premium Per User ライセンスの主な違いは以下の通りです。
ライセンスの種類 | 無料 | Pro | Premium per User |
---|---|---|---|
レポートの作成 | ○ | ○ | ○ |
ワークスペース※1 の作成 | × | ○ | ○ |
コンテンツ共有・共同作業成 | × | ○ | ○ |
ストレージ上限 ①マイワークスペース ②共有ワークスペース ③Premiumワークスペース |
①10GB/ ユーザー ②- ③- |
①10GB/ ユーザー ②10GB/ ワークスペース ③- |
①10GB/ ユーザー ②10GB/ ワークスペース ③100TB/ テナント |
データセットサイズ制限 | 1GB | 1GB | 100GB |
高度な AI 機能 | × | × | ○ |
-
1:BI レポートを保存・公開する場所を「ワークスペース」と呼びます。
BI のレポートを作成して自分で利用するだけであれば、無償版でも十分に利用できます。
レポートを共有する場合は、ライセンスの種類に注意する必要があります。以下にどのライセンスで作成・共有したコンテンツがどのライセンスで利用可能かを示します。
コンテンツにアクセスするユーザーのライセンス | ||||
---|---|---|---|---|
コンテンツを作成/共有するユーザーのライセンス (共有ワークスペースにあるコンテンツ) |
無料版 | Pro | Premium Per User |
|
無料版 | × | × | × | |
Pro | × | 〇 | 〇 | |
Premium Per User |
× | × | 〇 | |
Premium ワークスペースにあるコンテンツ※1 | 〇 | 〇 | 〇 |
-
1:Premiumワークスペースにコンテンツを公開できるのは、Pro および Premium Per User ライセンスのユーザーです。
Power BI の各ライセンスについて詳しくは、以下を参照してください。
こんなことにはこのライセンス
個人的な分析のために BI レポートを作成したい
無料版で行うことができます。レポートをマイワークスペースにアップロードすれば、PC だけでなくスマートフォンやタブレットからも利用できます。
経営者や上司が利用するための BI レポートを作成したい
作成するユーザー、利用するユーザーの両方に Power BI Pro ライセンスが必要です。作成者は共有ワークスペースにレポートをアップロードし、経営者や上司はそれを利用します。
複数のユーザーで共同作業したい
共同作業する全ユーザーに Power BI Pro ライセンスが必要です。レポートは共有ワークスペースにアップロードして共同作業を行います。
全社的な BI レポートを作成し、全社員が利用できるようにしたい
社員数が多い場合は、Power BI Premium ライセンスが有利です。Premium ワークスペースで公開されたレポートは、無料版のユーザーも利用可能です。
Power Pages
Power Pages は、ユーザーが簡単に Web ページを作成できるサービスです。豊富なテンプレートやドラッグ アンド ドロップ エディターを活用して、プロフェッショナルな Web サイトを構築できます。
Power Pages のライセンス
Power Pages の主なライセンスは以下の通りです。
・Power Pages 認証済みユーザー ★
・Power Pages 匿名ユーザー ★
★ の付いているものが有償のライセンスです。
この他に無料試用版も用意されています。
認証済みユーザーは、特定のユーザーが認証プロバイダーでサインインして利用する Web ページ/Web サイト用のライセンスです。認証プロバイダーとして、Entra ID、ADFS、Microsoft アカウント、Facebook、Google、X (旧 Twitter)、LinkedIn などが利用できます。
匿名ユーザーは、多くの人に認証無しで利用してもらう Web ページ/Web サイト用のライセンスです。
Power Pages の各ライセンスについて詳しくは、以下を参照してください。
こんなことにはこのライセンス
Power Pages の機能を試してみたい
30日間利用できる試用版が用意されています。
自社の社員がどこからでもアクセスできる社内ポータルサイトを作りたい
社員は組織アカウント(Entra ID アカウント)でサインインできるので、Power Pages 認証済みユーザーが適しています。
関連会社やビジネスパートナーに情報提供する Web サイトを作りたい
特定の外部のユーザーにのみ公開するのであれば、Power Pages 認証済みユーザーが適しています。
投資家などに向けた IR の Web サイトを作りたい
不特定の人に公開する Web サイトなので、Power Pages 匿名ユーザーが適しています。
Copilot Studio
Copilot Studio は、ローコード・ノーコードでチャットボットを作成・管理できるプラットフォームです。自然言語処理を活用してユーザーの意図を理解し、対話をスムーズに進めることができます。
Copilot Studio のライセンス
Copilot Studio の主なライセンスは以下の通りです。
・Copilot Studio for Teams(旧称 Power Virtual Agents for Teams)
・Copilot Studio in Microsoft 365 Copilot
・Copilot Studio ライセンス(従量課金あるいはメッセージパック)★
★ の付いているものが Copilot Studio の有償のライセンスです。
Teams ライセンスのある Microsoft 365 ユーザーは Copilot Studio for Teamsを、Microsoft 365 Copilot ライセンスのあるユーザーは Copilot Studio in Microsoft 365 Copilot を利用できます。
Copilot Studio ライセンスは、テナントに対するライセンスとなります。チャットボットを作成・管理するユーザーには、別途ユーザー単位のライセンス(無償)が必要です。
それぞれのライセンスは機能と作成できるもの・公開できる場所が異なっています。ライセンスの主な違いは以下の通りです。
プラン | Copilot Studio | Copilot Studio in Microsoft 365 Copilot |
Copilot Studio for Teams |
---|---|---|---|
作成できるもの | 独自のスタンドアロンの コパイロット |
Microsoft 365 Copilot の プラグイン |
Teams チャットボット |
公開場所 | 外部/内部の任意の場所 | Microsoft 365 Copilot のみ | Teams のチャネル/チャットのみ |
メッセージ数/テナント/月 | 25,000 ※メッセージパックの場合 |
無制限 | 無制限※1 |
生成 AI による会話 | 〇 | 〇 | × |
独自のスタンドアロンのコパイロットの作成と公開 | 〇 | × | × |
Microsoft 365 Copilot をカスタマイズするためのプラグインの作成と公開 | × | 〇 | × |
Power Automate for Copilot Studio クラウド フローの作成 | 〇 | 〇 | × |
事前構築コネクタ | 標準/プレミアム | 標準/プレミアム | 標準 |
カスタムコネクタ | 〇 | 〇 | × |
Dataverse for Copilot | 〇 | 〇 | ×※2 |
-
1:Teams 内のチャットボットでのみ利用可能。
-
2:Dataverse for Teams が利用できます。
Copilot Studio の各ライセンスについて詳しくは、以下を参照してください。
こんなことにはこのライセンス
Teams のチャットで自動応答するボットを作成したい
Copilot Studio for Teams が利用できます。生成 AI による会話は利用できませんが、設定済みのパターンで応答を行うボットを作成できます。
Microsoft 365 Copilot に機能を追加したい
Microsoft 365 Copilot ライセンスがあれば、Copilot を拡張するプラグインを作成できます。生成 AI による会話も利用できます。
社内ポータルサイトや顧客向け Web サイトに AI チャットボットを設置したい
Copilot Studio ライセンスが必要です。生成 AI による会話が行えるチャットボットを、ポータルサイトや外部向け Web サイトに設置できます。
まとめ
Power Platform はローコード・ノーコードで業務の効率化・自動化・分析などを行える強力なツールです。非常に多くの便利な機能がある反面、ライセンス体系が複雑で分かりにくい部分があります。この記事ではそれをできるだけ分かりやすく解説しています。
説明を簡単にするために詳細な条件などを省略している部分もありますので、実際にライセンスを導入される際は、ぜひ当社担当営業までお問い合わせください。